未来の開拓者。挑戦する研究開発の仕事。
理系のお仕事の取材に行くと、知らない世界を垣間見ることができ、とても刺激になります。
なかでも、印象に残っているのは研究開発の仕事です。
産みの苦しみ、喜び。それは、研究の人にしか分からないものかもしれません。
以前インタビューしたのはワクチンの研究開発者の女性。これからどんなワクチンを作るのか、研究・開発する人です。
研究開発職を選んだ志望動機は・・・。
医療現場で患者さんに施す「1対1」の仕事も素晴らしいですが、私はもっと広義で困っている人を助けられる仕事がしたいと、研究開発の道を選びました。研究開発職なら、開発したものが大勢の人に届くことで「1対♾️」になる。それは私にとって大きな魅力でした。
仕事の大まかな流れは・・・。
まずは厚労省のウェブサイトに、様々な感染症が開発優先順位の高いものからリストアップされているので、その情報をもとに何を開発していくかを見極めます。その後試作品を作って動物実験をし、ラボスケールからパイロットスケールへ。ここまで来てGOが出たら製造へと進められるのだそう。
彼女は取材当時、業界初の試みに挑戦していました。
これまで王道であった作り方を辞め、別の手法で作るというのです。
それはなぜか。
長年の課題であった「ワクチンの副反応」を無くすという使命感があったからだそう。
最近ではコロナワクチンを接種後、熱が出た人も多かったですよね。
「ワクチン」は予防の観点から接種するものなので、感染症を防げるのはいいとして、正直副反応で苦しいのは嫌なものです。
ただ、私たちは、たくさんの情報を得て、副反応が出るのはしょうがない、出なければラッキーとして捉えてきた一面もあります。
それくらい、ワクチンに副反応はつきものとして捉えてきました。
ところが、取材中、彼女は私にこう言いました。
「安全で有効な成分だけを用いて、副反応のないワクチンを作ろうとするのが次世代の流れ」と。
そんな時代が来るのか!とワクワクしながら取材を進めました。
ーでも、作り方を変えるっていうことは、前例のないことですよね。今まで誰も通ったことのない道を通るのは不安じゃないですか?
今までやったことのないことへの挑戦は、失敗のリスクも大きいし、達成しない可能性も大きい。
そもそも、どうやってやればいいのか、わからないところから始まるのかもしれない。
研究開発をするときのモチベーション、不安と挑戦のバランスが気になったのです。
「確かに、難しいことに挑戦しようとしています。ただ、研究者としては、不可能とか難しいと言われていることに挑戦することにやりがいを感じます。どうやったら達成できるか考えることが楽しいんですよ」。
詳しく聞くと、彼女は過去にダメと思われたことを再度検証し、小さな可能性を見つけてゴールへと導いた経験がありました。だから、開発にはいくつもの局面があることは承知のうえだし、みんながダメと言っても、自分が信じる限り挑戦することを心に決めていた。そして、ぶつかりながら、もがきながら進むことが、自分の成長につながることを知っていたのです。
その経験というのが入社1年目のことでした。
ワクチンのもとを作る材料が繊細で安定しないため研究が一定のところから進められなかったそう。普通は材料が不適合ということで、別の材料に切り替えるのですが、彼女は改めてデータを解析。そこで「いけるはずだ」という確信めいたものを持ちました。
捨てられかけた可能性を掬い上げ、もう一度研究のテーブルに乗せた彼女はひとりで研究を続けます。
応援者は彼女の上司たった一人。上司だけは「やってみろ」と背中を押してくれたのだとか。
しかし、思うように結果は出ません。
「いけるはずだ!と感じたはずなのに、なかなか結果が出なくて、弱気になることも、周りから見放されそうな時もありました。でも、3年経ってようやく結果を出すことができ、今は開発に向けてのプロジェクトが進められています」。
これらの経験は彼女に自分の信念を貫くことの大切さを教えてくれたといいます。
「だれかにダメと言われても、自分の目で確かめたいという探求心が強く、失敗を恐れるより好奇心が勝ってしまう私にとって、研究開発は生きがいそのものです」。
取材をして10年以上が経ちますが、今も彼女の誇らしい笑顔を思い出すことができます。
ダメかもしれないと思っても、前を向き続けられるのは、彼女に「自分を信じて突き進む力」があったから。
そして、だれもが見放した0.1%の可能性を100%に引き上げたのは、たった一人の「自分を信じて突き進む力」があったからなのです。
そう。彼女に「自分を信じて突き進む力」がなければ、この世に求められるワクチンは誕生しなかった。
あのときのワクチンは、もう世に出て世界中の人を感染症から守っているのだろうか。
誰もやっていないことに挑戦する研究開発の仕事は、「未来を変えたい」という使命感と自分を信じる力が不可欠なのかもしれません。
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