ライターの仕事ってどんなことするの?
読者の方のなかには、これからフリーランスの(コピー)ライターとしてやっていこうとしている方もいるかもしれません。ここでは私が今やっている仕事、過去にやっていた仕事など、実際に体験した“書く仕事”をテーマ別にご紹介します。
タウン情報誌の仕事
今は無くなってしまった媒体ですが、外部ライターとして新店舗を紹介するコーナーや、働く人にフォーカスしたコーナー、特集記事などの一部を担当していました。
コンテンツの内容は社内で決定され、企画に基づいて外部ライターがカメラを持って取材に行き、原稿を上げてメールで納品します。納品までには先方チェックも行い、執筆した人が原稿の内容に責任をもって入稿します。印刷にされる前には校正して原稿に間違いがないか確認作業も行います。
たまに、記事広告の仕事が舞い込み、そのときだけはカメラマンがいましたが、雑誌の記事内の写真はほぼライターが撮影しています。意外にカメラセンスが問われるなぁというのが実感。
お店の人と馴染みになったり、おいしい場所を知れたり、いち早くオープン情報をキャッチして告知できることは楽しかったです。
基本的に取材に関してはお店側からお金をもらうことはないので、取材対象者にとってライターは「タダで宣伝してくれる人」という認識でありがたがってもらえるのもポイント。
たまにマスコミ嫌いな人もいますが、ほとんどの人は取材というと喜んでもらえました。
取材・撮影、原稿作成、原稿確認依頼、修正、入稿、校正とたくさんの工程があるため、忙しい毎日でした。
住宅情報誌の仕事
読者に「やっぱり家っていいよね」と思ってもらい、工務店の契約に結びつけるというのが狙いの媒体です。雑誌が主体でしたが、WEBも連動するようになり、取材した内容は雑誌とWEBの両方に掲載されています。
建築専門誌ではないので、建築の基礎知識がなくてもできます。大切なのは工務店の強みを施主の思いで語ってもらい記事にすること。そして、結果的に工務店のPRにつながっていくことだと思って取材しています。
今も県内の大小様々な工務店がこの媒体に自社の実例などを掲載し、PRを行っています。
企業側のメリットは媒体(雑誌やWEB)が営業ツールとなってくれること。
今、個人宅を訪問して、「家建てませんか?」という営業マンはいないと思います。みな、自社の強みをブランディングしてホームページやSNS等で訴求し、イベントなどでお客様と接点をもちながら契約に繋いでいます。
この媒体は地元工務店の内容に限定した県初の住宅情報誌だったこともあり、県内の30〜40代の家を建てようとするファミリー層にマッチし、大きな反響を得るようになりました。
発行部数が伸びたのはもちろん、出稿したクライアントも読者からアクションがあると喜ばれました。
先に専門誌ではないと書きましたが、年間70棟もの家を取材していると、専門用語もわかるようになり、自然と知識も身に付きます。こういった経験を重ねることで、建築専門誌への仕事も受けられるようになるのだと思います。(実際、工務店からのWEB制作などのオファーは増えました)
ここでの仕事は取材、原稿作成、入稿のみ。撮影はカメラマンが行い、校正は社内編集が行なっています。
就職サイトの仕事
私の時代はエントリーシートを使っての就職活動でしたが、今はサイトへの登録から始まるようです。
業界や業種、エリアからも選べるようになっており、就活の効率はぐんと向上しています。
私たちライターは就職サイトに掲載する会社の記事を作成します。
会社の特徴や沿革、求める人物像を社長や人事担当者に聞いたり、入社してまもない新人社員に志望動機や教育体制について話を聞いたり、中堅社員にやりがいを聞いたり…と、さまざまな人に取材します。
テーマも内容も就職サイトを運営する会社の制作担当者がお客様と決定しており、ライターはその内容に即して取材を進めていくことになります。
多種多様な職業、会社に出会うきっかけをもらえることは興味深く、また働く人たちの言葉には力があり、取材のたびに感動があります。
決められたテーマに基づいて取材をして原稿作成して入稿するまでが仕事です。それ以降の修正は社内編集が行っていますが、大幅な修正がある場合には差し戻しがあります。
座談会形式のページを希望されることも多いです。お題に対して取材対象者だけで会話が弾むことは稀。実際は質問を全員に投げかけて回答をもらい、それをつなぐ作業をライター側でやっているんですよ。
ブランディングの仕事
新しくお店を立ち上げようと思う、新しい商品をどうやって打ち出していこう、ターゲットを変えてリスタートしたい…。そういったニーズに売り方やPRの仕方を含めてご提案します。
クライアントは農業、ケーキ屋、家具屋、食品メーカーなどなど、規模も業種もさまざまです。
大半の場合、広告代理店やデザイン制作会社が元請けとなり、ライティング部分を私が担当します。
元請けがクライアントと打ち合わせをし、コンセプトや方向性が決定した後に、受注することもありますが、なるべく、最初の段階から打ち合わせに入れるようにお願いしています。
なぜなら、方向性を誤ってしまうと、その後の展開を含め間違った方向に行ってしまうからです。
コピーライターはクライアントのもつサービスや物の強みを抽出するところから始まり、キャッチコピーで言語化し、ブランド構築の骨子となる部分を作ります。ボディコピー、ブランドステートメントも作成します。ここができれば、WEBサイトやパンフレットの方向性がブレずに進められるのです。デザインばかりこだわる企業がありますが、実はブランディングがとても重要です。
取材した内容をまとめるというより、クライアントと話しながら方向性を見出し、そのキーワードを持ち帰ってブランドステートメントを考えます。言ったことをそのまま文字にするのではなく、言葉を置き換えながら本質を端的に表現することが求められます。決して文字数は多くありませんが、その分考えることが多い仕事です。
WEBライターの仕事
編集プロダクション等が自社で立ち上げたウェブサイトのライティングを依頼されることが増えてきました。内容や取材対象者が決まっている場合もありますが、サイトのコンセプトだけが決められており、人選はライターに委ねられているパターンもあります。また、取材なしで、いろんなサイトを見ながら情報をまとめていくというものもありました。
比較的どれも安価な仕事が多く、たくさんの仕事をしないとWEBライターの仕事だけでは食べていくことは難しいというのが実態ではないでしょうか。
ただ、WEBは雑誌や書籍とは違い、目に触れる機会が圧倒的に多いです。WEBニュースに取り上げられると、yahooニュースやGoogleのおすすめなどにもピックアップされるなど反響が大きく、取材対象者に喜ばれることが多いのも事実。
さらに、ライターとしては“取材を名目に会いたい人に会える”というメリットがあります。また、自分が見つけたネタを自分の名前で発信できるというやりがいもあります。
取材したい人をピックアップして編集部に打診、OKが出れば取材、原稿作成、入稿。撮影する場合もありますが、取材対象者が持っている画像をいただくことがほとんどです。
制作物に関する仕事
WEBサイトやパンフレットと言っても、ターゲットや目的によって制作物は多岐にわたります。
例えば、新卒の人材獲得求人を目的としているパンフレットであれば、学生に向けて仕事内容をわかりやすく説明したり、先輩からのメッセージを書いたりしますし、商品のリーフレットであれば、どこで配布するかによってサイズや内容を検討しなければなりません。
課題や用途を聞いたうえで内容を検討し、どういう内容をどう組み込むかを考えるのもコピーライターの仕事です。デザイナーへの指示書という意味で私が手書きラフを作成することもあります。ページネーションや見せ方など文章の流れから考えるのです。
ブランディングの仕事に通じることですが、どちらかというとブランディングは川上工程、制作は川下工程に近い作業になります。とはいえ、制作物のライティングに関わるときも、ブランディングは切り離せません。ターゲットや目的を意識しながらライティング・制作を行っています。
コンペがある場合は素案づくりから関わります。課題や意図を把握したうえで何を軸にするかを決めて提案。この段階で方向性はカメラマン、デザイナー、ライター全員が共有しています。取材が終わったら、デザイナーが組んだラフをもとに原稿作成します。
添削・校正の仕事
あまり多くはありませんが、たまに依頼されることがあります。
挨拶状を自社で作成したが、表現に誤りはないかチェックしてほしいという案件や、外注予算がなかったので、社員が文章を作ったが、パンフレットにするにあたり、間違いがないかチェックしてほしいという内容でした。どこまで赤入れするか、はお客様の要望に応じて対応します。
また、珍しいのは、小説の添削依頼です。趣味で書いている人から文章を添削してほしいという依頼でした。事実を伝える記事の書き方と違い、小説は表現することが求められるので、その点に注意しながら、添削を行いました。結果的に喜んでいただけたのでほっとしたことを覚えています。
思い込みで書いていることがあったり、話し言葉や方言に気づかずに書いてしまっていることがあります。それをプロが見て正しい文章に修正します。頂いた原稿に加筆修正をします。
まとめ
いかがでしょうか。ひとくちに書く仕事といってもいろんな仕事があることがお分かりいただけると思います。「書く仕事は伝える仕事」です。何かの魅力を伝えるということは、業界業種を問わず、さまざまなシーンで求められるもの。なくてはならない仕事だと思っています。
大切なことは、クライアントとの信頼関係を損なわず、丁寧に仕事をしていくこと。また、「食文化ライター」など自分の強みを肩書きにしている人もいます。自分の核となるテーマを見つけて仕事をしていくのも自分ブランディングにおいて大切なことです。